認知症になりたくなければ歯を守りましょう(23)
「歳だから歯が抜けて当たり前」という考えが全身疾患を引き起こす(その2)
日本人の「歳をとったら、歯が抜けるのは当たり前」という状況に歯止めをかけるために、すでに厚生労働省が動いています。
「8020運動」という言葉をお聞きになったことはありませんか?
これは、「80歳になっても、自分の歯を20本残そう」と、厚生労働省と日本歯科医師会が、1989年から始めた運動です。
大人の歯は、全部で28本が基本です。(他にも親知らずが4本ありますが、親知らずが生えてこない人もいるので、基本数には含めません)
このうち少なくとも20本以上自分の歯があれば、ほとんどの食べ物を嚙み砕くことができて、死ぬまで美味しく好きなものが食べられて、楽しく健康で生きられる。
そのような趣旨で始められた運動です。
この運動が功を奏して、厚生労働省が発表した2016年調査では、80~84歳の「8020」達成者が51.2%となりました。
しかし、20本ということは、すでに8本の歯が失われているわけです。
例えば、あなたが上の前歯が4本、下の前歯が4本無くなっていることをイメージしてみてください。
「うわー、かなりごっそり抜けているなあ」という感じではないでしょうか。
こんな状態で食事をして、物を咬んでも、ちっとも脳に血流が回らないような気がしませんか?
ですから、本気で脳の老化を防ぎたいなら、全身疾患を予防したいなら、「8020」で満足しないで、もっと高いレベルを目指す必要があります。
つまり、「80歳で28本、すべての歯を残す」という気持ちで、毎日の歯磨きを行う必要があるのです。
すでに歯が抜けている人の場合は、入れ歯やインプラントなどを使用して、毎日モノを咬んでいれば、脳の血流を増やすことができます。
しかし問題なのは、入れ歯やインプラントを使わざるを得なくなった歯のケア習慣が身についてしまっていることです。
その習慣とは、磨き残しがたくさんあって、それをそのまま放置し続けるということです。
入れ歯やインプラントを使用している人の中には、「入れ歯はむし歯にならないから」、「インプラントはむし歯にならないから」という理由で、歯のケアが今まで以上にいい加減になる人もいます。
そうした油断こそが、認知症や全身疾患を呼び寄せるのです。
ですから、すでに入れ歯やインプラントを使用している人こそ、今すぐに正しい歯のケアを身につけなくてはならないのです。
私たちは生まれてから死ぬまで、「口」と「歯」を使って、栄養を採り続けなければ、生きていくことはできません。
それほどまでに命に直結する「歯」を磨き、「口」の中の清潔を保つことは、命そのものを健康に保つことでもあるのです。
健康意識の高い人は、このことをよく知っていて、すでに熱心な歯のケアを行っていて、どんどん脳を若返らせて、全身疾患リスクも下げています。