認知症になりたくなければ歯を守りましょう(15)
口腔内細菌がもたらすさまざまな病気(2)・・・アルツハイマー病(その1)
・歯周病になると、脳にゴミが溜まる
ここからは、口の中のボヤである歯周病が、全身にどんな病気をもたらすかを見ていきましょう。
まずは、認知症です。
歯周病を引き起こす歯周病菌が、アルツハイマー型認知症の原因となることがわかっています。
歯周病菌が出す毒素によって歯ぐきなどに炎症が起きると、血液中に炎症物質である「サイトカイン」が流れ込みます。
このサイトカインが血液で運ばれて脳に流れ込むと、「アミロイドβ」というタンパク質が脳の中で増えるのですが、これが「脳のゴミ」と呼ばれるものです。
アミロイドβは、脳の中で記憶を司る「海馬」を中心に少しずつ溜まっていきます。
溜まったゴミに圧迫されて、徐々に脳細胞が死滅していきます。
どんどん記憶力が低下していきます。
これがアルツハイマー型認知症の発生、悪化のメカニズムだと考えられています。
つまり、歯周病になると脳にゴミが溜まって、アルツハイマー型認知症の発症・悪化のリスクが高まるのです。
悪化リスクがどのくらい高まるかを調べた研究があります。
アルツハイマー病のマウスと、アルツハイマー病でさらに歯周病菌に感染させたマウスを比べた結果、役4ヶ月後には、歯周病菌に感染させたマウスの海馬に沈着したアミロイドβは、なんと面積で約2.5倍、量で約1.5倍に増えていたそうです。
・脳のゴミである「アミロイドβ」とアルツハイマー病の関係
ちなみに、アミロイドβが脳内に溜まって認知症を発症するまでには、約25年ほどかかると言われています。
厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、歯周病を発症する人の年齢のピークは45~54歳とされているのですが、これに25年を足すと、アルツハイマー型認知症患者が急増する70代という年齢層とぴったり重なるのです。
このことからも、歯周病とアルツハイマー病の関わりが推測されます。
また、アメリカの研究グループが、アルツハイマー型認知症で亡くなった人の脳を調べたところ、歯周病の原因菌の代表格であるプロフィロモナス・ジンジバリス菌が出す毒素である
リポポリサッカライド(LPS)が高頻度で検出されました。
その一方で、アルツハイマー型認知症を発症していない人の脳からは、LPSは検出されていません。
これで、歯周病がアルツハイマー型認知症に影響を及ぼしていることがはっきりとわかったのです。