認知症になりたくなければ歯を守りましょう(17)
口腔内細菌がもたらすさまざまな病気(3)・・・糖尿病
・歯周病菌が、糖尿病を引き起こす⁉
近年、歯周病がさまざまな全身疾患を引き起こすきっかけになっていることがわかっています。
例えば、「糖尿病」です。
糖尿病は、すい臓から分泌されるホルモンである「インスリン」の働きが阻害される病気です。
インスリンが正常に働かないと、血流中の栄養(ブドウ糖)を全身の細胞にうまく取り込めなくなります。
血流中のブドウ糖を「血糖」と言いますが、糖尿病になると、血液中のブドウ糖を処理しきれなくなって、血糖値が上がります。
血糖値が上がった状態が長く続くと、全身の血管に負荷がかかってボロボロになり、やがては網膜、腎臓、足の毛細血管、大動脈などに障害を引き起こします。
最悪の場合、失明したり、腎不全が起きて人工透析が必要になったり、足に潰瘍や壊疽が起こって切断が必要になることさえあります。
脳の血管がボロボロになると、血管性認知症の原因になる場合もあります。
進行すると非常に恐ろしい糖尿病ですが、これに歯周病が関連していることが明らかになっています。
歯周病菌が出す毒素の影響で作られる炎症物質である「サイトカイン」が血管を通して全身に放出されると、インスリンが効きにくくなって、糖尿病が発症・進行しやすくなるのです。
・歯周病患者は2倍、糖尿病になりやすい
この事実を裏付けるいくつかの調査報告があります。
アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)によると、歯周病患者が糖尿病になる率は、歯周病でない人の約2倍とされています。
この調査によると、歯周病患者は、糖尿病と診断されるほどの高血糖ではなくても、平均血糖値が高い人が多いことも明らかになりました。
これは、今は糖尿病を発症していなくても、歯周病であれば、いわゆる「糖尿病予備軍」の可能性が高いということです。
また、東京医科歯科大学大学院総合研究科の和泉雄一教授の報告によると、歯周病にかかっている糖尿病患者に対して、歯科医師が歯石除去と歯のブラッシング指導を行ったところ、平均血糖値が低下したとおっしゃっています。
つまり、歯周病の原因となる歯石やプラークを落とすと、糖尿病リスクが下がることがわかったのです。
歯周病と糖尿病の関連性は、医療界に徐々に浸透しはじめています。
近年では、医科と歯科が連携して患者さんの治療にあたる「医科歯科連携」を行っている医療機関も少しずつ増えてきています。