コロナ禍の健康管理は口腔ケアが不可欠
日本で初めて新型コロナウイルス感染症患者が確認されてから1年が経過しました。
昨年4月から5月の1回目の緊急事態宣言を経て、昨年夏には一度感染者数が減少し、新型コロナウイルス感染症の流行は一息ついたかのようにみえました。
しかし多くの識者の指摘通り、例年インフルエンザが流行する冬場になり、政府のGoToキャンペーンなどにより再び感染者が急増し、大都市圏では2回目の緊急事態宣言が発令されました。
この1年間、新型コロナウイルスについて、その病態解明や症状に応じた治療法がほぼ確立されてきており、新型コロナワクチン接種も始まっています。
歯科領域で言えば、口腔ケアと新型コロナウイルス感染症の重症化予防の関係です。インフルエンザウィルスでは、すでに口腔ケアでその感染や重症化を防ぐことが明らかになっています。しかし、新型コロナウイルスは細胞内に入る鍵となる受容体(ACE2)が口腔、特に味覚を感じる味蕾に多く存在し、その感染力の強さから、口腔ケアだけでは感染を防ぐことはできないとされています。
新型コロナウイルス感染症は、細菌との混合感染や2次性細菌性肺炎によりサイトカインストームを引き起こし重症化することがわかっています。このサイトカインストームの引き金になっているのは、嫌気性グラム陰性桿菌であるP.gingivalisを代表とする歯周病菌の菌体成分であるLipopolysaccharide(以下LPS)と言われています。
エンドトキシン(内毒素)であるLPSが歯周病で傷ついた血管から血中に入りエンドトキシン血症になった場合に歯磨きをすることで血中エンドトキシン濃度が改善したという研究結果からも、歯周病の改善が、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクの軽減にとっては不可欠と言えます。
口腔は身体の入り口であり、糖尿病をはじめ歯周病と全身疾患の関わりが解明されています。口腔の機能維持や口腔ケアのために定期的な歯科受診と毎日の歯磨きなどのセルフケアは、コロナ禍において感染患者の重症化予防という点で重要性がますます大きくなっていると言えます。